神戸新聞社 RECRUIT2025
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先輩社員に聞く

編集局報道部

葛藤の先にやりがい

井上 太郎

INOUE TARO

東播支社、編集局経済部、姫路本社神崎支局を経て2021年3月から編集局報道部。2014年入社。

  

 兵庫県警本部の担当で、主に殺人事件を調べる捜査1課、窃盗事件に対応する捜査3課を取材しています。

 県警は県下に46の警察署を構え、重大事件が起きると発生地の警察署などに捜査本部を設置します。「帳場」と呼ばれるこの捜査本部が現場検証、周辺の聞き込み、参考人や容疑者の聴取でどんな情報を得ているか、警察幹部や捜査員からできるだけ細かく聞き出して記事を書くのが私の仕事です。

 テレビのニュースや新聞記事で「捜査関係者によると○△□×」と報じられているのを目にしたことはないでしょうか。警察の公式発表ではないことを表しており、その代表的な取材手法の一つが「夜討ち朝駆け」です。捜査員の出退勤を見計らい、ひっそりと庁外で会って話を聞くことを指します。映画や小説ではよくことの核心に迫る場面がドラマチックに描かれるので、中にはそこから「記者=かっこいい」とイメージする人がいるかもしれませんが(私もその1人)、現実はどうも違います。「もう来ないで」と叱られ、避けられ、寒さに震えながら何時間も待った挙げ句に空振りなんてこともしばしば。爽やかな朝焼け、満天の星空を見上げては「地球はきょうも回ってます」としかデスク(上司)に報告できない日だってあります。

 アナログ全開で不毛に感じるでしょうか。ところが、この壁の向こう側に、ネットやSNSで誰でも検索、発信できるようなお手軽情報にはない驚きと価値が隠れています。日々大量のニュースがあふれる中、世間の関心が高いうちに少しでも詳しい事実を報じていく。その積み重ねが法整備やルール改正の機運を生み、再発防止につながることもあります。

 こうした事件報道の意義を一段と意識するのが、被害者や遺族、加害者に直接会って話を聞くときです。

 被害者の無念を少しでも晴らしたいのか、あるいは社会の理不尽を世に問いたいのか―。人の生き死にに関わる事件であっても、私たちは決して容疑者を捕まえたり、裁判で有罪無罪を証明したりする機関ではありません。「じゃあ一体何のために?」。取材相手から直球でぶつけられることもあるこの「問い」の答えを自分なりに探し、葛藤しながら文章を書く。正解は分かりません。ただ、必ずやってくる締め切りまでにどうあがき、悩んだかが、個性として記事ににじみ出るものだと思います。それがこの仕事のやりがいであると同時に、そうやって書かれた記事の集合体である、新聞というオールドメディアの強みそのものではないか、とも感じます。

学生へ一言

神戸新聞は地元紙なので、兵庫に腰を据えて取材を深められるのが最大の特徴です。そんな仕事がしたい人はぜひ、受験してみてください。